「オリジナルでなければいけない」風潮がまだまだ強い昨今、
作り手側でも、無(ゼロ)から作らなければ…という強迫観念を持っている方もいるのではないでしょうか。
もしも、そういう自分への追い込みで創造の手が止まっているなら、『クリエイティブの授業 STEAL LIKE AN ARTIST〜10 Things Nobody Told You about Being Creative〜』(著:オースティン・クレオン、訳:千葉敏生、実務教育出版)がきっと背中を押してくれます。
著者は、新聞を黒塗りして、単語を浮かべて詩にするアーティスト。
その斬新な手法は本書にも取り入れられていて、とてもワクワクしながら読み進めることができます。
アーティストのように盗め。ただし…
表紙にもあるように、本書では「STEAL(盗む)」という言葉が頻繁に出ます。
アーティストはよくこんな質問をされる。
「どこからアイデアがわいてくるんですか?」
正直なアーティストはこう答える。
「そりゃ、盗むのさ」
(ページ13)
「僕がじっくり鑑賞するのは、盗めるところがある作品だけだね」デヴィッド・ボウイ(イギリスのミュージシャン)
(ページ14)
なぜ「盗む」のかというと、
創作作品には必ずベースがある。100パーセント”オリジナル”なものなんてないんだ。
(ページ15)
だからこそ、オリジナルでなければというプレッシャーから解放して、他人の影響を受けても良いんだと。受け入れることから始めようと述べています。
他人の技や良いと思ったネタを盗んでストックしていくのです。
ただし、そのまま盗むだけではダメです。
君がたった1人の影響しか受けていなければ、君は第2の〇〇と呼ばれるだろう。だが、100人から盗んでしまえば、”君はオリジナルだ!”と言われるのだ。
(ページ44)
ここでハッとさせられます。
盗んでコピーするだけでは贋作にしかなりません。対象のアーティストの世界観を、作品の本質を理解して、自身へ消化していくことで、ものまねを超えるということです。
それが”オリジナル”です。
本書の構成
本書は、主に4つにわけて、
クリエイティブな人生を送るためのアドバイスを提案しています。
- 創作の知恵
③自分の読みたい本を書こう,④手を使おう,できるまではできるフリ - 考え方のコツ
⑥無名を楽しもう,評価を求めない - デジタル時代のヒント
デジタルとアナログの空間を分けよう,インターネットに自分の世界を作ろう - 生き方のアドバイス
⑧他人には親切に,⑨平凡に生きよう,定職をもとう
気になる項目を読むだけでも、今の自分を振り返ることができて良い刺激になると思います。
最後に
本書は、厚みは薄め(164ページ)で、図も随所にちりばめられていて読みやすくなっています。
ページ47の”よい盗み方と悪い盗み方”のリストは、どこかで見たことがある人も多いのではないでしょうか。
「オリジナルでなければ」と肩肘張って創造の手が止まっている人には、背中を押してくれる、そんな一冊です。